-4th style EB Edition-
[漫画] 週刊少年サンデー2007年度第25号感想追記~BFC臨床レポート
 昨日から今日にかけてずっとぼんやりしていました。実は先日の鎌児ショックがまだ抜けてなくて、ふとした弾みに思い出しては鬱にハマるというか叫び出したくなるというか、そのくせ妙にそれを思い返してうっとりしてしまうというか、そんな症状に陥っていたのです。普通の読者の方なら「ラブコメの主人公がちょっと女装したら意外と可愛かっただけ」程度のことだったのかもしれませんが、私にはもっと大事だったんです。何故かというと、私はかつて「バーコードファイター」に激しい精神的ショックを受けた少年たち、すなわちバーコードファイター・チルドレン(以下BFC)の一人だったからです。

 「バーコードファイター」は1992年から1994年までコロコロに連載されていた漫画。当時あった「バーコードバトラー」という玩具のタイアップ企画で、バーコードの数値を元に自分だけのロボットを生み出し、自分でそれを操縦して戦えるというバーチャルゲームを舞台に、熱血主人公が成長してゆく……という、大筋だけを取り出せばごくまっとうな少年漫画です。しかし……詳しいことはちょっと作品名で検索をかければすぐわかるんですが、ご存知ない方のために少し解説すると、この漫画、当時の多くの少年読者にとんでもないトラウマを残していったことで有名なんです。

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 問題となったのが、上の本作品ヒロイン・有栖川桜(さくら)。良くも悪くも子供っぽい絵柄のヒロインが溢れていたコロコロの中で(中には「電人ファウスト」みたいなのもありましたが(笑))、さくらには他とは違うなんともいえない色気があって、子供心にどきどきしていたのを覚えています。

 しかし、さくらには重大な秘密がありました。
 そう、こんなにかわいいのに、さくらは男だったのです。

 今でこそそう大したことではありませんが、当時としては、しかも幼稚園児から小学生くらいが読む漫画雑誌として、これは異常とも呼べる展開でした。当然のごとく、さくらに感情移入していた純真な子供読者たちは心に致命的なダメージを受け、私を含むその中の大半がトラウマを抱くことになってしまったのです。BFCの誕生した瞬間です。

 こうして生まれてしまったBFCですが、その症状は患者によって異なります。私のように女装と聞いただけで過敏反応を示すようになった者もいれば、逆にそっちの道に目覚めてしまった者もいます。「さくら」という名前だけでショック反応を起こす者もいましたし、当時の読者の中には、あまりのショックに吐いた、数日間寝込んだといった重症患者の存在もあったようです。

 サンデー読者ならば似たような例として「葵DESTRUCTION!!」の鮫島葵を思い浮かべる方もいるでしょう。「葵DESTRUCTION!!(以下葵)」とは、どう見ても小学生~中学生の美少女にしか見えない38才の親父の奔放な言動に息子の強面不良少年が四苦八苦するという内容の、井上和郎先生の名作読み切り。大勢の暴走族集団が親父一人に萌え狂って改心するというあまりに衝撃的な内容は、発表当時は大変な反響を巻き起こし、伝説の読み切り、読者の何かを壊す聖典などと呼び敬われたことで有名です(その話題ぶりから読み切りとして異例の続編が二度も描かれ、さらに異例なことに単発単行本化されています)。

 しかし、この「バーコードファイター(以下BF)」の破壊力は、正直「葵DESTRUCTION!!」の比ではありませんでした。今回は、この「葵」と対比する形で、「BF」の恐ろしさをまとめてみたいと思います。

 まず第一の恐怖が、その下積み期間の圧倒的な違い。「葵」は単発の読み切りモノで、問題のカミングアウトシーンまで5ページしかありません。しかも、そこに至るまで「何かとんでもないオヤジがいる」という前情報が提示されているため、読者としてもある程度の覚悟を持って葵の正体に挑むことができます。ゆえに、カミングアウトによって受けるショックはある程度緩和されています。しかし、「BF」でさくらの正体が明かされるまでに要した期間はおよそ1年。その上、カミングアウトの回までほとんど前フリはありませんでした。つまり、「BF」はBFCが一年間信じ続けた現実を一瞬で粉々に崩壊させてしまったのです。そのショックたるや計り知れないものがあります。

 第二に、ヒロインの性質の違いが挙げられます。「葵」の鮫島葵は、可愛いことは可愛いのですが、その可愛らしさはあくまでマスコット的な可愛らしさであって、異性に対する感情――はっきり言って性的欲求とはややニュアンスが異なります。だから性別と容姿の間にギャップがあっても、あまり深刻な問題として受け取る必要がありません。しかし「BF」のさくらは、先程述べたように女性として魅力的だったのです。BFCにしてみれば、マスコットというよりは「同じクラスにいるけっこう可愛い女の子」に近い扱いでした。さくらのキャラクター性として「女性であること」はかなり大きな位置を占めていたので、それが一気に失われてしまうことでのダメージもまた非常に大きかったのです。
 
 そして「BF」が「葵」を凌ぐ問題作になった最大にして最悪の理由は、その対象がある程度こなれた読者層(サンデーの少年読者を含む)ではなく、まだ年端も行かない幼い少年たちだったことです。子供が子供たる所以は、自分の価値観と世界の価値観を一致させて認識している点にあります。つまり、「さくらは女の子だ」という常識はその子供にとって世界の常識だったのです。それが突然否定されてしまった――この瞬間、子供にとっての世界の一部は失われ、そこにはぽっかりと大きな穴が開いてしまったのです。ある程度世界の常識を正しく把握し、自分の価値観と世界の価値観をきちんと分けることができている大人読者の場合は、ここまでの事態にはなり得なかったと思います。

 また、これが「BF」の何よりも恐ろしいところだったんですが、さくらが男だったということが判明しても、相変わらずさくらはヒロインであり続けていました。多少性別をネタにしたギャグシーンが入るようにはなりましたが、他に新たなヒロインと呼ぶに相応しいキャラクターが登場するわけでもなく(清白彩はヒロイン扱いされていなかったと思います)、「男だった」という事実だけが完全に宙ぶらりんになっていたのです。

 これで「男だからヒロインではなくなる」とか、「男だから他人の扱いも変わる」などといった作中での変化があれば、我々読者もそれに同調し、さくらというキャラクターの頭の中での位置付けの置き換えを行ってショックを和らげていたでしょう。しかし「BF」はそれを許しませんでした。男であるという事実が判明してもさくらはさくらとして他の登場人物に好かれ、さくら自身も何一つ変わることはなく、さくらのサービスショットはその後も平然と誌面に載り、さくらというヒロインはBFCにとって変わらず魅力的であり続けたのです。それどころか連載後期は明らかにさくらのサービスショットがエスカレートしていきました。

 これではBFCはさくらへの感情を黒歴史として封印することもできません。こうして、さくらが笑ったり活躍するたびに我々BFCは「自分が好きになったのは男であって、かつ未だにその男が好きなのだ」ということを繰り返し繰り返し目前に突き付けられ、一度崩れた現実を立て直すこともできずに、幼心にただ着々と自身のトラウマを深めていったのです。

 今でこそ私もある程度の年齢になり、精神的な体裁も整ったのでトラウマが表に出ることは滅多になくなりましたが、しかし当時植え付けられ増幅されたショックは未だに精神の奥底に眠っています。そしてそれは、今回の鎌児のようなふとした弾みで簡単に表出してしまいます。「葵」の単行本で作者の井上先生は「この漫画を読んで何かが壊れたという感想を数多く目にした」と書いていますが、その言を借りるなら我々BFCのそれはとっくの昔に粉々にぶっ壊れています。

 一度壊れたものはもう元には戻りません。時間という名の接着剤でなんとか組み立て直した程度では、ちょっとした刺激でまたバラバラに崩れ落ちてしまいます。今もなお我々BFCは、いつまた崩れるともわからない何かを抱えたまま、もしくは壊れてしまった何かの破片を抱えたまま、何食わぬ顔で街中を歩いているのです。


(ネタなのかマジなのか良くわからないまま終わり)


 ……え、なら「ハヤテ」の女装の時なんの反応もなかったのは何故かって? だって、畑先生の画力じゃ男女の描き分けなんかあってないようなもn(r
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by hpsuke | 2007-05-24 19:51 | 漫画
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