人気ブログランキング | 話題のタグを見る
-4th style EB Edition-
[雑記] 読書感想・横山秀夫「半落ち」
あらすじ:
 「アルツハイマーに悩む妻を殺しました」。連続女児暴行犯の逮捕を目前にして色めき立つW県警捜査本部に、四十九歳の現職警部・梶総一郎が自首してきたというニュースが舞い込んだ。優しい人格者であるという評判通り、取調べに対して経過も動機も素直に語る梶だったが、何故か殺害から自首までの空白の二日間の行動については固く口を閉ざす。やがて歌舞伎町で梶を見たという証言が挙がり、思わぬ不祥事に県警は大きく動揺する。梶は歓楽街で一体何をしていたのか? どうして何も喋ろうとしないのか? そして、それほど立派な警察官が、殺人の罪を犯してしまった時、どうして自ら死を選ばなかったのか?


雑感:
 こちらも「模倣犯」と同じく、少し前に映画化した作品の原作小説。宮部を読み終わったところで読書好きの同期に未読の横山を勧められたのが直接のきっかけですが、元々良い評価を聞いていた作品でもあったし、さらに言うとあらすじのようないかにもなお涙頂戴物に目がないのがダメ押しの理由になったので、「模倣犯」で上がり切ったテンションで「次はお前だ!」と選んでしまいました。迷った時はミーハーに行く人間です。

 ですが、読んでみると予想と違った内容で驚きました。はっきり言って話の主眼は梶ではなく、事件を機に彼に関わることになった周囲の人間ですね。ひとりの人間(この場合は梶)の秘密を深く掘り下げていくタイプのミステリーかと思いきや、梶の事件で警察や検事・記者などの各登場人物が何を思いどのような影響を受けたのかが肝の話だったので、そういう意味では少々拍子抜けしてしまいました。いや、今までの宣伝文句がどれも梶の行動の謎を強くプッシュするものばかりだったので、てっきり人情ミステリの類かと。

 しかし梶を主役ではなく話の触媒であると理解して読んでみると、これはこれで新しい世界が開ける良い作品でした。不自由な組織の中で精一杯奮闘する大人の渋み、ゴタゴタをめぐる人間関係の機微といった、今まで敬遠してきた組織モノの読み方が今回の作品を通じて少しわかった気がします。今までシンプルな勧善懲悪を至上とする少年漫画脳(笑)に支配されていましたが、ちょっとは引き出しが増えたかもしれません。


総括:
 人情ミステリっぽいあらすじで紹介されることの多い作品ですが、実際はかなり毛色の違う、どちらかというと組織ドラマに分類されるタイプの作品です。その点にさえ気をつければ、普通に楽しめる良い作品だと思います。ちなみに謎解きの過程の楽しみを期待するのもやめておいた方が無難です(この作品は狭義のミステリーではありません)。ラストに明かされる梶の行動の謎も、十分に感慨深いけれど、派手で衝撃に満ちた意外な真相といった類のものでは決してないので注意。まあ私は当然のように泣きましたけどね!(笑) だって熱いもん! 梶も、彼を救おうと志をひとつにする男たちも熱いんだもん! なんか変なイチャモンがついてたようですが私は気にしませんよ! そんなこと気にしてたら少年漫画なんて読めないし。

 あ、「模倣犯」と違い、こちらの映画はまだ観ていないのでご了承を。主演がSMAPならすぐ観られたと思うんですけどねー(笑)。これも変な解釈がなされて違うジャンルの映画になってそうで観るのが怖いなあ……。
by hpsuke | 2009-04-18 20:06 | 雑記
<< [雑記] 読書感想・横山秀夫「... [同人音楽] 茶太CDリスト更... >>



漫画・東方・同人音楽ブログ

by hpsuke
カテゴリ
ちょっと人気のあった記事
(Easy・Lunatic対象)
(バーコードファイター解説)
(ONE PIECE考察)
(みつどもえ考察)
(絶対可憐チルドレン考察)
(例大祭版対応)
(2009年6月現在)
(超気紛れ更新)


へっぽこ直運営リンク

(漫画感想サイト中心)
(読んだ本の記録)
(最新感想他つぶやき)
(更新凍結中)
(頑張って現役更新中)
(現在約945枚所持)
(ごくまれに増量)
検索
以前の記事
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧