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[漫画] 好きな物を褒められると嬉しいよね/「100,101」について
 雷句先生のブログで、須藤真澄先生の「庭先案内」の名前が挙げられていてガッツポーズ。須藤先生と言えば世界有数のねこ漫画家ということで有名ですが、ファンタジーも非常に良い物を書くのです。「アクアリウム」は絶対一度は読んでおいて損はない名作。レビュー漫画の金字塔「おさんぽ大王」やゆずシリーズも、エンターテインメントとは何なのか、レビュー漫画はどうあるべきかを学ぶ上ではもってこいの佳作です。

 私が中でも好きなのは、短編集「あゆみ」収録の短編「100,101」。これは私の漫画遍歴の中でもトップ5に入るくらい好きだったりします。幽霊の見える青年と、100人目・101人目に出会った幽霊とのほのぼのした交流を描いた二話の掌編からなる作品ですが、この僅か16ページの中に「異形の化け物と人間の交流モノ」、通称「幽霊モノ」のエッセンスが凝縮されているので読み応えは抜群です。近しいけれど決して触れ合えない存在、それでも互いを想う心の哀しさと美しさ。しかし決して暗くはならず、あっけないほどの日常に紛れさせて描いているので読後感は非常に爽やか。この爽やかさまで含めて完璧です。もう褒める言葉しか見つかりません(笑)。

 特に白眉は103ページの2コマ目(空き缶に埋もれた部屋の俯瞰図)から3~4コマ目への流れ、そして110ページ最後のちらと外を見るコマから111ページ最初の「あるわけねーよな」のコマへの流れ。この一瞬で彼の中をどれほどの感情が駆け巡ったかを考えると涙が出そうになります。ちらりと思い描いた幸せな夢が、「頬が冷たい」「三輪車がない」という無常な現実によって打ち砕かれる瞬間。あまりに幸せすぎるが故、あまりに短すぎるが故に悲劇はさらにその色を濃くします。

 「幽霊モノ」が結局は報われない悲恋物語の変形である以上、その出来は刹那の夢をどれだけ美しく描くかにかかっています。そういう意味で「100,101」は、その夢をこれ以上ないほど儚く脆く描くことによっていっそうの輝きを持たせ、それを読んでいてすぐに気付かないほどさりげなく含ませることで物語の深みとして昇華させることに成功した、他に類を見ない傑作であると思うのです。
by hpsuke | 2008-04-15 03:47 | 漫画
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