-4th style EB Edition-
[雑記] 「ジョジョの奇妙な冒険」"The Book" /乙一 ネタバレ感想
 というわけで、改めて簡単に「"The Book" jojo's bizarre adventure 4th another day」のネタバレ感想です。ちなみに「bizarre」は「奇妙な」の意です。あまり見ない英単語ですが、そのまんまでしたね(笑)。



 うん、先の読了報告でも述べましたが、「面白かった」ですよ。黒乙一・本領発揮!といった救いのない(?)お話でしたが、目を離せない展開、「ジョジョ」らしい頭を使った頭脳戦、そして運命や血縁といったものを強く意識させる結末と見所は目白押しでした。中でも第四部独特の、日常と非日常が仲良く手を繋ぎ合っているようで、しかし表と裏のようにはっきり別物として描かれている世界の再現が特に秀逸。元々乙一先生は「少しだけファンタジーの入った物語」が得意ですから、こういった素材とは親和性が高いんでしょうね。

 とはいえ、「ジョジョの奇妙な冒険」の続編小説というよりは、どちらかというと乙一オリジナル小説といった意味合いの方が強いのもまた事実で、杜王町という舞台とスタンドの存在、そしてとりあえず程度にしか物語に絡んでこない第四部の面々くらいしか「ジョジョ」の直接的な要素は含まれていません。オリジナルキャラの物語はオリジナルキャラだけで完結してしまっているので、康一や仗助、億泰たちはぶっちゃけいてもいなくても大差ないんですよね。もちろんスタンドの存在がなければ成立しない話なので、「ジョジョ」でやる意味がないわけではありませんが、無理に康一や仗助・億泰を出す意味はあんまり感じられません。話への絡み方も強引だったし、彼らの代わりに「千帆に惚れているスタンド使いの少年」を一人登場させれば、それで全てが事足りるような気がしました。あと、言動や言葉遣いが原作らしくない点もいくつかあったかな。

 ただ。それらのマイナス点を全て含めても、この小説はコミックのノベライズ小説として、やれるだけのことはすべてやりきったのではないかと思えます。つまり、これらのマイナス点と言われるものは自覚的にしたことであるような気がするのです。なぜなら、第四部キャラの存在意義が薄い、言葉遣いが違う、といった問題は、乙一先生が自分で書いていて気付かないはずがないからです。にも関わらず完成品がそうなっている理由は、私にはそれがわざとだからだとしか思えません。原作と一体化することを目指すのではなく、逆に距離を大切にした結果として、あるいはその意思表明として、そうなってしまったのではないでしょうか。 
『ジョジョ』のキャラクターを自由に動かせていないというか、操り人形しか書けていない違和感がずっとつきまとっていて…。それで、いろいろと考える必要があると思って自分で何度もボツにして作戦を練っていました。

最初はネタ的な部分を排除する方向で書いていたんですが、そうすると借り物的な違和感が出てしまって。ところがネタ的な視点を入れたら、不思議と違和感がなくなっていくような気がしたので積極的に入れようと思いました。


JUMP J-BOOKS「The Book」特設ページ掲載の発売記念対談より)
 これらの発言からも、乙一先生がジョジョワールドと一体化しようとして、そして断念したであろう様子が伺えます。だから開き直ってファンとしての視点から物語を描こうと、自身のオリジナル部分を前面に押し出したのでしょう。さらに原作登場人物たちを「あえて遠い人物として描く」ことで突き放し、距離を保つことによって初めてちゃんと動かすことができたんじゃないのかな、という気がします(とはいえ、「コミックスを読んでね」発言は、流石にやりすぎだったと思いますが)。人間は、本当に好きなものについて語ろうとすると、冷静で客観的な視点を見失ってしまうものですから……。

 などと言うと、じゃあそんなものを「ジョジョ」の公式外伝扱いにして出版するのはどうなんだ、という批判が必然的に出てくるでしょう。実際、原作のジョジョワールドを求めて本を購入したファンに、わざと原作とは異なる世界を見せつけるわけですから、そこには不誠実さが含まれているような気もします。しかし、私はそれでも、今回の作品は最善の一手であったと支持します。なぜなら、原作漫画の世界は原作漫画でしか達成され得ず、他の作者や手法をもって再現するのは不可能だと思っているからです。そもそも不可能なのだから、いっそ諦めて「原作再現」とは違う路線を目指した方が、中途半端に再現にこだわるよりも、結果的に完成度の高いものが生まれる可能性が高いでしょう。

 避難所のいつぞやの拍手返事で書いたような気がしますが、私は元々メディアミックスの類には興味はありません。「例え同じ話を全く同じように描いたとしても、描く人間が異なればそれは全く別の作品にしかならない」と思っているからです。今回の小説は、「ジョジョ」だから買わねばならない、という動機ではなく、好きな作家が好きな漫画をモチーフに新作を書いたから購入したのです(書いたのが乙一先生でなければ、恐らく購入しませんでした)。

 だからそもそも再現性という点においては期待していませんでしたし、そのスタンスは間違っていないと今でも確信しています。荒木先生の「ジョジョ」は荒木先生にしか描けない。第三者が無理に似せようとしても、逆にちくちくとした違和感が余計に目立っていたのではないでしょうか。「例えばそんな船を造ったとして それが全く別の船であると最も強く感じてしまうのは ――きっとお前たち自身だ」というやつです。荒木先生の作品が誰にでも描けるようなシロモノではないということは、きっとファンの方ならみなさんご存知のはず。だから、「荒木ジョジョ」が描けないのなら、批判覚悟で「乙一ジョジョ」に注力しよう、という乙一先生の覚悟を私は最大に評価するのです。

 もちろん上記の主張はあくまで私個人の意見であって、これでは納得のいかない人も大勢いるでしょう。ただ、私は自分の価値観と照らし合わせてみて、今回の仕事が「ノベライズとして最善の手を尽くした快作」であると感じました。ジョジョ好きとして、そして一人の作家として恥じない仕事をしたのではないかと思います。
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by hpsuke | 2007-12-03 01:10 | 雑記
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